「こどもの日」を考える




 今年も5月5日の新聞各紙は、この国の子供の数の減少を、異句同音に報じていました。総務省が国の15歳未満の子供の数を、「こどもの日」に合わせて、5月4日に発表するからです。見出しを並べてみます。

 「総数1,649万人」、「32年連続減少」、「総人口比、12.9%(過去最低更新)」、「人口4,000万人以上の29ケ国中、最低水準」、「福島は2年連続1万人超の減少」
ほとんどの新聞に、減少の原因の追求はありませんが、産経だけが、24年版子供・子育て白書の記述「子供を諦める最も多い理由‐子育てや教育にお金がかかり過ぎるから」を紹介し、政府少子化担当相の「国が支援していく」との決意コメントを載せていました。
世界一この国は子供が生まれにくい国のようです。生まれても育てることを放棄された悲惨な目にあう子供のニュースもよくあります。

 さて、非正規労働者は、雇用者全体で、女性53%、男性15%といわれています。この国では、自身一人の生活の困難と不安とをかかえている人が多いのです。結婚したり、子供を産み育てる力のない人が多いのです。仮に夫が正社員としても、深夜営業飲食店の従業員であれば、自宅で昼間、睡眠をとらなければなりません。十分な居住空間に恵まれていない場合、同居する活発な幼児との生活音に耐えられるでしょうか。
 
 非正規労働の女性は、早産率が正社員や主婦の2・5倍との統計も出されています(厚生労働省研究班調査)。無事に出産したとしても、働かなければ生活できないのに、保育所は圧倒的に少なく、看病でいつ休むか予測できない乳飲み子の母親を雇ってくれる温厚な事業主は少ないのです。
 さらに、「子供の貧困の問題」も取り上げなければなりません。 2割に近い、326万人が貧困状態といいます。先進30カ国の中で最下位と。確かに、大きな邸宅に子供の出入りを見かけません。そこでは大概、老人が一人二人でひっそり暮らしています。賑やかな子供の声は、アパート等の集合住宅や狭小密集住宅から聞こえます。
 この国はもはや、子供を生み育てる体力を失いつつあるようです。原因の一つに、非正規労働者をここまで多く生み出した、国のモラルの低下があると考えます。規制緩和に寄り添う、罰則規定のない、勧告・努力義務一辺倒の、貧弱な労働政策、それを許してきたわれわれに責任があるといえるでしょう。
 
                2013、5、7           (おわり)
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